AI時代の経理・財務部門のこれからと目指すべき役割。求められるのは真のビジネスパーソン

経理・財務部門を中心としたバックオフィス業務のほとんどは AI や RPA で自動化され、仕事がなくなるのでは?との論調がネットメディアを中心に展開されていますが、近い将来に向けた経理・財務部門のあり方はどうなるか?国内外のCFO、経理・財務部門の方々との関係性が深い一般社団法人 日本CFO協会 専務理事 事務局長 の谷口 宏(やぐち ひろし)氏にお話をお伺いしました。


 

あなたの会社は投資家への説明責任を十分に果たしているか?

ーー 企業の持続的な成長には投資家との健全な関係や資本市場との対話が重要だと思いますが、最近の日本企業の取り組みと姿勢について教えてください。

谷口:「伊藤レポート」や「未来投資会議」、あるいは「日本版スチュワード・シップコード」の導入が目指すものは企業と投資家の健全な関係であり、中長期に双方の利益が最大化されることを目的としています。投資家と企業はしばしば対立関係に陥ることがありますが、正しい情報をベースにより緊張感の高い対立関係であればむしろポジティブと言えます。

現在、四半期決算制度の緩和も検討されていますが、これも短期的な視点ではなく、長期的な成長を目的に資本市場や投資家との対話を促進し、日本企業の国際競争力を高めたいという政府の姿勢が表れていると思います。

事業戦略やこれからの未来に経理・財務部門のあなたは巻き込まれているか?

ーー 経営者、そして、投資家を含めたステイクホルダーのニーズに対応するために経理・財務部門に期待されている役割はどのようなものでしょうか?

谷口:今までの経理・財務部門はビジネスの守りの部分を期待されてきたと思います。成長市場では市場自体が大きくなっていますので、兵站的な役割を固めることで前線の規模を拡大できるという環境でした。前線のサポートの効率性が重要視されるのでまずは現場に行き、状況を理解して関係性を作るというやり方は、業務でも人材の育て方でも効率的だったと言えます。

ただし、現在、市場の成熟化、多様化が進んでおり、投資回収が思うように進まないケースが増えてきています。経営改革の施策も社内より、社外や市場、日本より海外へと変化しており、企業内の資源を管理するという今までのやり方を続けていてはジリ貧に陥っていくように思います。

経理・財務部門にいま求められているのは、多様性の中から持続的な成長の種を育て上げていくというアプローチだと思います。社内の財務情報にとどまらず、市場、取引先などから定量的あるいは定性的な情報を集めて分析し、ビジネスの展望に対する自分なりの考えを持ち、事業へ直接貢献していくことが求められていると思います。

事業への理解は引き続き重要ですが、ITツールの進化スピードは加速度を増しており、もはや業務プロセスはシステム理解度や利用度に依存していると言っても過言ではなくなっています。ビジネスがさらにグローバルになると個別最適化されたプロセスからデータを収集することは困難が伴いますし、海外売上比率が高い企業の場合、現地法人を支援、管理できるだけの英語力や文化や人種といったダイバーシティへの理解力も求められるようになり、経理・財務部門の業務は今までに増して多様化していると思います。

会社人から経理・財務マン、そして真のビジネスパーソンへ

ーー 経理・財務部門に求められる役割が多様化する中で、今後どのようなスキルセットとマインドセットが必要でしょうか?

谷口:日本企業では現場を含めた様々な職種を理解した「ジェネラリスト」が求められてきました、いわゆる会社人が求められてきたと思います。一方、欧米企業はどの部門も業務特化型の「プロフェッショナル」が従事しており、経理・財務部門でいえばCPA取得者が業務にあたるケースがほとんどです。これからの時代は、どちらの方がいいということではなく、会社のビジネス全般への十分な理解とともに経理・財務の専門領域にも明るい、「ジェネラリスト」と「プロフェッショナル」が融合した存在、つまり本当の意味での「ビジネスパーソン」になれるかが重要だと思います。様々な情報と数字を頭に入れながら風を読み、自分の経験と価値観で事業の将来性とこれからのビジネスを語れるスキルとマインドセットが必要です。

日本は今後、労働人口の減少が加速度的に進み、業務支援型のクラウドサービスやそれらを繋ぐAI/RPAなどが経理・財務業務を自動化し、社員は付加価値の高い業務に特化していく時代に入りつつあります。現状ではまだまだ領収書、請求書、契約書などが、紙やエクセルといった個別最適型のツールで処理されていると思いますが、こうしたシステムに乗っていない業務を早急に電子化、そしてデジタル化しないことにはAIやデジタルテクノロジーの恩恵にあずかることはできず、いつまでも付加価値の高い業務にたどり着けません

事業部門から見れば、守りの要諦を理解し、ITツールのプロセスを理解し、数字に強いという人材は喉から手が出るほど欲しい人材でしょうし、真のビジネスマンになれるポテンシャルも高いと思います。数字や情報に裏打ちされた自分なりのビジネスの将来性を語れる経営者の参謀役として、常に企業変革の中枢に存在する、そのような経理・財務人材こそが企業も国も社会も変えていくと思います。

(SAP Concur News Room記事より転載)

著者プロフィール

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柿野 拓
大学卒業後は大手ERPベンダーに入社、15年に渡りマーケティングを中心に様々な業務を経験後、株式会社コンカーへ転職。現在、マーケティング、PR、インサイドセールスなどに従事。ヒト自体にとても興味があり、そのヒトの考え方と行動がいつも気になっています。座右の銘は「高下在心」、段ボール運びなども、結構楽しそうにやって生きています。

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