五輪金「チームパシュート」に学ぶチームワークとは?必要なのは雑談だった!

ビジネスシーンでたびたび使う「チームワーク」という言葉。しかし、その意味を正しく理解している人は案外少ないのかもしれません。今回は、あらためてチームワークの意味を解説するとともに、ピョンチャン五輪の「チームパシュート」から、チームワークがもたらす成果を考察。研究データを参考に、現代のチームに不可欠な要素を、分かりやすく紹介していきます。

グループは足し算、チームは掛け算

チームワークとは、個々が持つ能力を引き出し合い、弱みを補い合うことで、個人では実現できない作業を成し遂げるための共同動作のことを呼びます。

ここで混合しやすのが、グループという概念です。

グループも同じ集合体を指す言葉ですが、意味は異なります。グループでは、一人ひとりが能力を最大限に発揮し、それを足したものを成果と呼ぶことに対し、チームではそこに“相乗効果”を求め、より高い成果を生み出すことを目的としています。足し算か掛け算か、と考えると分かりやすいでしょう。

パシュートから学ぶチームワーク

良いチームワークは、しばしばスポーツの世界で見られます。今回は、まだ記憶に新しいピョンチャン五輪、なかでも絶対王者であるオランダに勝利し、見事金メダルを獲得した「女子チームパシュート」を例に挙げ、解説していきます。

パシュートは、オリンピックのスピードスケート競技において唯一チームで戦う競技です。3人が縦に並び先頭を入れ替えながら400メートルトラックを6周(女子の場合)し、最後の選手がゴールしたタイムを競うというスポーツです。

なぜパシュートを例に挙げたのかというと、“個人で滑るよりも、チームで滑った方が早いタイムを出せる”という、チームの力が個人の力を上回る競技だからです。

競技のポイントは、体力を奪う“空気抵抗”の受け方にあります。3人で隊列を組むパシュートでは、先頭の選手がスピードを保って試合をリード。一方、後ろ2人の選手は、前の選手に身を隠して空気抵抗から逃れ、体力を温存します。つまり、先頭の選手はスピードメーカーであると同時に、後方の選手を守る存在でもあるということ。さらに順番は入れ替わるため、誰もが主役になるのです。

このチームの素晴らしいところは、個人のタイムはオランダ勢の方が優位だったのにもかかわらず勝利を収めたことにあります。時速約50キロのスピードのなか、前後の選手との間隔をわずか数十センチにまで縮めて手と足の動きまでもそろえ、3人が一体となる美しい滑りを見せました。

ベストタイムの異なる選手がスピードを合わせるためには、相当な努力を重ねたことでしょう。実際に彼女たちは、年間300日を超える共同生活を経て、お互いの滑りの特徴や癖を体に染み込ませたといいます。

インタビューで彼女たちは、「チームでしか成し遂げることができない勝利だった」「チームで戦えば、強い選手がたくさんいる国にも勝てるんだぞっていう証明ができた」と語りました。チームだからこそ強くなる。そんなチームワークのあるべき姿を、パシュートの選手たちが体現しました。

グーグル社が説いた「心理的安全性」の大切さ

では、チームワークを築くためには何が必要なのでしょうか。ここでは、Google Inc.(グーグル社)の研究によって明らかとなった「心理的安全性」に焦点を当て、解説していきます。

心理的安全性という言葉は以前から存在していましたが、グーグル社が2012年から約4年にわたり実施した、働き方や環境に重点をおいた労働改革プロジェクト「プロジェクト・アリストテレス」で、“心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである”と位置付けたことで注目を集めました。

心理的安全性とは心理学用語のひとつで、他者の反応におびえて羞恥心を感じることなく、自分の考えや感情を気兼ねなく発言できる環境や雰囲気のことをいいます。つまり“メンバー全員がフェアな立場で発言できる状況”です。この安全性が担保されることで初めて他者と積極的に関わり、お互いに向上し合いたいという精神が生まれてきます。

心理的安全性を高めるために、すぐに実践できて効果を実感しやすいこととして、会議のやり方を工夫することをおすすめします。

会議テーマは事前に共有すること

まず、発言するためにはそれぞれに自分の意見があることが前提です。個々が自分の意見を発言できるように、テーマは事前に共有しましょう。それによってメンバーのベクトルがそろい、発言のしやすい環境になります。

進行役は“調整役”でもある

例えば、発言の少ないメンバーに声掛けをして、一部のメンバーだけで盛り上がらないように場を仕切る“調整役”が機能すると、会議はさらに生産的なものになります。進行役には調整役でもあることを意識させましょう。

小さなチームを作る

それでも発言頻度に差が出てくるようなら、3人くらいの小さなチームを作り、比較的気楽に取り組める課題を与えてみます。少ない人数になるほど発言の必要性が増すため、ディスカッションが生まれやすい構造になります。

可能であれば、発言の少ないメンバーをリーダーに配置してみましょう。チームの大切さや楽しさを、よりリアルに体感できるはずです。

やはり、雑談は大事だった

もうひとつ、面白い研究データがあります。マサチューセッツ工科大学の人間工学研究所で、チーム育成におけるコミュニケーションの影響力を研究したところ、メンバー間のやりとりが増えるだけで、チームの効率が35%もUPしたことが分かりました。

ここでいうやりとりとは、主に日常で交わされる雑談を示しています。例えば、食堂のテーブルを長くしていろいろな人と話す機会を増やすというささやかな取り組みでも、効果を発揮するという結果が出ています。また、ある銀行のコールセンターでは、従業員が一斉に休憩を取るスケジュールにしたところ、生産性の向上により年間18億円も収益が見込めるようになったそうです。

雑談がコミュニケーションを円滑にすることはかねてからいわれていましたが、それを数字で立証した興味深い研究といえるでしょう。

「仲が良い」=「チームワークが良い」ではない

チームワークを築くときに注意したいことがあります。それは、仲が良いこととチームワークの良さは別物だということです。関係性が深まってくると出やすい傾向を以下にまとめました。あなたのチームはいかがですか?

  • 信頼が甘えとなり、サボりがちなメンバーがいる
  • 嫌われたくないという思いから、言いたいことが言えない関係になっている
  • 意見の合うメンバーだけでタッグを組んでいる

チームワークはバランスです。リーダーに当たる人は「今、チームはどんな状態なのか」を客観的に判断し、都度対処することが大切です。

まとめ

チームワークを築くうえで大切なのは特別なことではなく、普段の意思疎通にあることが分かります。ビジネスサイクルの早い現代では、このような当たり前のことを見落としがちなのかもしれません。

これからは、チームの強さが企業の強さ。今、チームワークに課題を感じているのであれば、それは逆にチャンスです。一人ひとりが持つ異なる個性を掛け合わせ、オリジナルで最強のチームを作っていきましょう。


参考:

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Back Office Heroes編集部